自宅で大量の写真データやバックアップなどをNASに入れて管理しています。NASってのはNetwork Attached Storageでネットワーク上のストレージ(ハードディスクのような)なんです。NASのメーカーのSynologyのNASを使うと、二台構成で耐障害に強化した仕組みを作ることができます。
SHA(Synology High Availability)というものです。すごく簡単に言うと二台のNASを使って、一つのNASに見せるものです。それぞれに同じデータを保存して、片方が止まったり壊れたりしてももう片方のNASが稼働してNASとして使い続けられるという仕組みです。もちろんデータの内容も保ってくれます。
私はSynologyさんのNASはかなり気に入っていて、旧モデルですがDS216jという二台ハードディスクが入るモデルのNASを使っています。この度Synology Japan株式会社殿より2019年2月に発売になった最新鋭NASをお借りすることができましたので、レポートしたいと思います。
対応機種はSynologyのNASのPlusシリーズとxsシリーズのみになります。エントリーモデルのJシリーズは対応していません。今回は2019年2月に新発売になったDS1019+で評価しました。DS1019+は5つのHDDが搭載できるものです。M.2 NVMe SSDスロットを二基もちキャッシュとして機能します。
DS1019+を二台用意してSHAを試してみます。
SynologyのNAS Disk Station PlusシリーズにはEthernetポートが2ポートついています。一つは、「クラスタ接続」と言って、通常のネットワークに接続してHUB、ルータやPCなどにつなぎます。もう一つのEthernetポートは「Heartbeat接続」2台NASを一対一で直接つなぎます。このポートでは、2台のNASをネットワークでつないで、2台のNASの内容を同期させます。また、2台のNASがお互い正常に動いているかを監視する役目もあります。(まさにハートビート!!)Heartbeat接続は直結する必要があります。ルータなどを介しての接続はできません。
Heartbeat接続ですが、一つのNASのLANポート1番目ともう一台のNASとつなぐのは同じ番号のLANポート1番目にしてください。LANポート2番目だったらもう一台もLANポート2番目同士をつないでください。
図はSynology NASの設定画面を使わせていただきました。
2台のNASはメインとして稼働する「アクティブサーバー」とデータの同期をされるバックアップ側の「パッシブサーバー」で構成します。稼働状態によりアクティブサーバーとパッシブサーバーは切り替わります。
NAS設定の条件は下記のとおりです。
つまり全く同じ構成のSynology NASを用意するということですね。
まず、2台のNASは予めインストールしておく必要があります。デフォルト設定で設定します。下記のように設定しました。
SHAのセットアップは非常に簡単です。Synology NASのWeb管理画面からパッケージ導入を行います。パッケージはHigh Availability Mangerをインストールします。まずは、「アクティブサーバー」側で設定を始めます。
インストールしたら[開く] で起動させます。[high-availabilityクラスタ作成]ボタンを押してセットアップを開始します。
SHAを稼働させるための条件が表示されます。
この後、推奨されるネットワーク構成とか解説があります。
「クラスタ接続」と「Heartbeat接続」のポート番号を指定します。推奨設定どおりLAN1側をHeartbeatにしました。
クラスタのホスト名とIPアドレスを指定します。この設定が実際使用するホスト名とIPアドレスになります。
すべての条件が揃っているかチェックします。一つでもNG項目があると先には進めません。
IPアドレスをスタティックに設定しないでDHCPのままになると下記のようにチェックで引っ掛かります。尚、ハートビート用として使用するLANポートはDHCP設定が適用されていることが必要です。
アクティブサーバー側のデータを残すか設定します。私は何もない状態からの設定だったのですべてのデータを消去にします。この後、認画面(パスワード入力付き)がめん
設定内容を確認します。ここの「受動サーバー」は「パッシブサーバー」を示しています。
では、「パッシブサーバー」はどうなっているでしょうか?パッシブサーバー側のNASのWeb管理画面を見てみます。すると、パッシブサーバー側は自動的にHigh Availability Managerがインストールされていました。
インストールは以上です。今後の設定はクラスタサーバーのIPアドレス192.168.0.200をアクセスします。これで、2台のNASが1台のNASに見えるようになります。Web管理画面からは稼働状況を見ることができます。
では、実際に障害が発生したときと復旧方法についてです。二つのケースについてお話します。一つは一時的に片方のNASが使えなくなった場合(データは残っている)、もう一つは片方のNASのディスクがクラッシュしてしまった場合です(データは消えている)。
2台稼働しているSynology NASの一台が停止してしまった場合です。稼働中のアクティブサーバー側のハードディスクをカートリッジから抜いてしまいます。(おー怖え~)
アクティブサーバーで障害が発生したため、クラスタ構成では片方が停止したように警告が出ます。但し、この間もNASとしては正常に稼働中でファイルサーバーとしてファイルのアクセスができます。更に、パッシブサーバーはアクティブサーバーに切り替わります。
ここでハードディスクを取り外した”元”アクティブサーバーの電源を落とします。取り外したHDDカートリッジを戻します。電源入れ直さなければ復旧できません。するとパッシブサーバーとして再稼働を始めます。障害発生中に変更のあった内容は再同期します。
同期が完了すると正常稼働に戻ります。
切り替わった「パッシブサーバー」と「アクティブサーバー」の役割は管理メニューから「切り替え」で交代することができます。
今度はハードディスクが故障するケースです。稼働中のアクティブサーバーのハードディスクを取り出してパーティションを全部削除してフォーマットします。これで「ハードディスクが故障して新しいハードディスクに交換した」ということで復旧してみます。
アクティブサーバーが障害発生した場合は、パッシブサーバーはアクティブサーバーに、アクティブサーバーはパッシブサーバーに切り替わります。
真っ新なハードディスクを入れたSynology NASの再インストールを行います。設定内容は故障前と同じ内容で設定します。特に固定IPアドレスにするのを忘れずに。(今回のケースでは192.168.0.101ですね)また、管理者のアカウントとパスワードはクラスタ構成の再設定で必要ですので控えておいてください。
[管理]から「パッシブサーバーを削除」します。パッシブサーバーを削除する場合はSynology NASの管理パスワードを入力して続行します。
パッシブサーバーが削除されました。ここから再構築を始めます。
ネットワーク構成をセットアップします。ここは、今までと構成は変えませんので、そのままの設定とします。
自動的にネットワーク上のサーバーを検出します。ここで再インストールしたパッシブサーバーのユーザー名とパスワードを入力します。
パッシブサーバー側にHigh Avilabilityパッケージをインストールします。パッシブサーバー側のWeb管理画面でインストールします。
アクティブサーバーのWeb設定画面に戻ります。パッケージのインストール後にパッシブサーバーの要件を検証してクリアしていることを確認します。
また、ハードディスクがクラッシュした場合のボリュームを修復します。
Synology NASのHigh Availabilty機能はデータの保全をする有効な手段と言えるでしょう。今回はそれぞれのサーバーにハードディスクを一台ずつ入れて評価しましたが、RAID構成にすればより効果があると考えます。