企業などで大量の複数のパソコンやサーバーのデータをバックアップする際、管理もバックアップするデータ量も多く大変です。SynologyのNASにパソコンやサーバーのデータをバックアップする機能はいくつかありますが、複数の大量のパソコンのデータを高効率でバックアップする機能「Active Backup for Business」という機能があります。
1. Active Backup for Businessでできること
2. インストールとセットアップ
3. バックアップ
4. リストア
5. ABBは企業向けやハイアマチュアには最適なバックアップソリューション
Active Backup for Business(以降ABBと呼びます)はSynology NAS(以降、Disk Stationと呼びます)のアプリケーションの一つでネットワーク上のPC、サーバー、ファイルサーバー、仮想マシンのバックアップを取る機能です。
バックアップ対象は下記のとおりです。(詳細はこちら)
バックアップはPC/サーバー丸ごとまたはファイルが対象になります。
ABBはDisk Stationのアプリケーションの一つとしてダウンロードして使用します。Web管理画面DSMのパッケージセンターからインストールします。
アクティベーションをしてインストール完了となります。
実際のバックアップをPCを例に設定してみます。メニューからPCを選択して[デバイスを追加する]ボタンをクリックします。
ここで「1.インストーラをダウンロードしてターゲットのWindowsデバイス(32ビット/64ビット)に展開してください」からバックアップするOSの32ビットまたは64ビットをクリックして、PCにActive Backup for Business Agentをインストールします。
Active Backup for Business Agentのインストール画面では、バックアップするDisk StationのIPアドレスと、バックアップ権限を持ったアカウントとパスワードを指定します。
Disk Stationとの接続が成功するとバックアップの概略画面が出てきます。
Active Backup fot Business AgenetはWindowsデスクトップのタスクトレイに入っており、必要に得応じて開くことができます。
Disk StationのABB画面ではAgentをインストールしてDisk Stationに接続したバックアップ対象のPCが表示されています。
ABBは企業などでの複数の大量のPCのバックアップを取ることを考慮してバックアップの方式・ルールを「テンプレート」として予め用意します。テンプレートでは下記の項目が設定できます。
以下に例を示します。
バックアップは手動で開始することもできます。タスクリストから[バックアップ]ボタンをクリックするとバックアップを手動開始します。
バックアップにSurface Proを追加しました。同時のバックアップは10台まで設定できます。(デフォルト設定では同時に5台までです)
PC側のActive Backup for Business Agentでもバックアップの状況を見ることができます。
バックアップは最初にフルバックアップ(対象を全部バックアップ)して、その後は増減のあった”差分”だけをバックアップしていきます。リストア時も過去に遡ってリストアできます。
これは私個人的に大ヒットの機能です。バックアップしたDisk Stationの中のデータで重複する内容は記録されず削除します。つまり「同じデータは記録せず、その分のディスク容量が節約できる」という機能です。(解説の図はSynologyさんの資料から引用さていただきました。)
バックアップ元が異なるデバイスや異なるOSであってもデータが重複すれば削除されます。これはバックアップするデータをブロック(分割された固定長のバックアップ データ)に分けて、SHA-256などのアルゴリズムを用いてハッシュ値を計算します。計算結果が同じブロックを重複ブロックとみなします。下図では異なるデバイスに記録されている[A]ブロックが重複すると[A]ブロックは一つだけ記録されて節約できます。
結構これが効果があります。私のデスクトップPC(SSD 256GB×3)とSurface Pro(SSD 128GB)の二台のバックアップ総容量と実際に使用されているディスク容量の例です。44%の容量削減となっています。
これは複数のPCのOS丸ごとバックアップした場合、WindowsのOS部分に関してはかなり重複するデータが多いでしょう。企業などで複数の多数のPCのバックアップを取る場合は同一構成のPCが多くなるわけですから、容量削減の効果はかなりあると言えるでしょう。
バックアップしたデータのリストアは複数の方法があります。「PCのデータを丸ごと」リストアする「ファイル単位」リストアできます。復元は過去のものに遡って行えます。ディスクの故障などではなく人為的なミスでファイルを消してしまったとか書き換えてしまったときにも対応できます。(結構こっちのケースの方が多いんですが)
ファイル単位のリストアは、Disk Station側(管理者側)から行う方法とPC側(利用者側)から行えます。
Web管理画面のABB画面のデバイス(PC)を選択して[復元]-[復元パネル]を選択します。
この後、WebのABBリストア画面が出てきます。
PCでActive Backup for Business Agentを起動します。[ポータルを復元]ボタンをクリックします。
この後、WebのABBリストア画面が出てきます。
WebのABBリストア画面を出そうとするとき警告メッセージが出ることがあります。(下記はMicrosoft Edge)ここはひるまず「Webページへ移動(非推奨)」をクリックして設定画面に進んでください。
リストア画面(Web画面)です。画面下部にタイムラインがあってバックアップを復元させたいタイミングを選びます。(下記の例ではバックアップを始めたばかりで一日の間の01:05と13:57のデータしかあませんが)
ファイル一覧から復元させたいファイル(フォルダ)を選択して、[復元]ボタンをクリックするとファイルが復元されます。
PCを丸ごとリストアする場合は、リストア用の起動メディア(USBメモリや光学メディア)を用意します。PCをリストア用の起動メディアから起動してDisk Stationからバックアップを読み込みます。
Web管理画面のABB画面のデバイス(PC)を選択して[復元]-[復元メディアの作成]を選択します。が、ここで表示されるのは復元メディア作成に関するドキュメント(PDF)へのリンクだけですので下記サイトから「Active Backup for Business リカバリ メディア クリエイター」ダウンロードしてください。製品は「NAS」を指定して、使用しているDisk Stationを選んで[デスクトップユーティリティ]をクリックしてください。
下の方にスクロールさせると「Synology Active Backup Recoverty Media Creator」がありますので、ダウンロードして実行してください。
メディアクリエイターを実行します。USBメディアまたはISOメディア(光学メディア用)
作成した起動メディアを使ってPCを起動させます。
Disk StationのIPアドレスとアカウントとパスワードを入れます。この後、復元ポイントを選んでリカバリを行います。
これでPCを丸ごと復元することができます。但し、ネットワーク経由でDisk Stationに接続できることが必須です。必要に応じてネットワークドライバを用意してください。
ちなみにMacは対応していないのか?ですが、対応していません。まあ、ここはDisk StationがTime Machineのサーバーになりますので、Time Machineを使えばいいでしょうね。(この記事は別途書きます。)
ABBは、企業向けの複数のPC/サーバーのバックアップをとるのに最適なソリューションと言えるかもしれません。企業だけではなく、パソコンを複数台持つハイアマチュアの方にもいいかもしれません。何よりも限られたリソースを有効に使えるバックアップデータの重複削除機能は極めて有用と考えます。