マイクロソフトがテクノロジーカンファリンスBuild 2024を前に「Copilot+ PC」を発表しました。このCopilot+ PCとは何なのか、それがどのように展開されていくかを三回に分けてお話します。
Copilot+ PCとは?
Copilot+ PCが提唱された背景
マイクロソフトのCopilot+ PCが登場した背景です。人とコンピューターとの関わり合いを考えるうえで、「人がコンピューターのことを理解する」のではなく、「AIを使ってコンピューターが人のことを理解できる」必要が出てきました。そのために必要なパソコンのユーザーインターフェースには、「テキスト、映像などの情報を組み合わせてAIで処理するマルチモーダル機能」、そして「個人的な知識やデータを記憶して思い出せること」が必要と考えました。
AIの処理はこれまでクラウドで実現され、強化されてきましたが、これをパソコンでより早く、より安全に行う必要があります。そこで、AIの処理をクラウドからエッジ、つまりパソコンに分散させる必要が出てきました。そして、「クラウドとエッジを連携させる新しいWindows PC」の登場が必要になりました。
Copilot+ PCとは?
Copilot+ PCは、「オンデバイスAI搭載PCブランド」を示します。Windowsを再構築するという考えのもと、Windowsに「Windows Copilot Runtime」を搭載し、Windows内で自然言語処理を可能にします。自然言語モデルを組み込むことで、よりパワフルな性能が求められます。
Copilot+ PCの要件
Copilot+ PCはPCで自然言語処理や後述するRecall機能を実現するためにある基準を設けています。さて、そんなCopilot+ PCはどのような要件が求められているのでしょうか?
まず、NPU・ニューラルプロセッシングユニットです。AI処理に必要なのは「単精度の足し算・掛け算」を「多数・同時」に行うことです。そしてそれを「低消費電力」で行えることです。それを実現するのがNPUです。処理能力は40TOPS以上としています。これは一秒間に40兆回以上の処理を行えるというものです。
そして高速でより大きなメモリが必要になります。16GB以上の容量で、メモリ規格はLPDDR5という高速メモリが必要です。ストレージは、後述するRecallのように短時間に画面のスナップショットを記録するために、ある程度の容量でSSDやUFSのように高速なストレージが必要になります。
Copilot+ PC でできること
Copilot+ PCでできることです。現在これらの機能が実装予定または実装済みです。
Reall機能
Rcall機能とは?
PCでの作業を振り返るのが難しいと感じたことはありませんか?そんな悩みを解決するのが、新機能「Recall」です。この機能は、ユーザーの画面操作をスナップショットとして記録し、デスクトップのスナップショットを約5秒ごとに取得します。
例えば、「右肩上がりの緑色の折れ線グラフどこだっけ?Excelで見たのかな?Power Pointの誰かのプレゼンで見たんだっけ?OutlookかTeamsの画像貼り付けで見たんだっけ?」といった疑問が浮かんだとき、Recallに「右肩上がりの緑色の折れ線グラフどこ」と尋ねるだけで、その時に作業したスナップショットを表示してくれます。Excel、PowerPoint、Outlook、Teamsなど、どのアプリで見たのかを簡単に思い出せるのです。
Recall機能でスナップショットが記録される容量です。スナップショットは、一定期間が過ぎると情報が消去されます。また、ストレージには最低50GBの空き容量が必要です。ストレージ領域が25GB未満になると、スナップショットの記録が自動的に一時停止します。ストレージあたりのスナップショットの容量は下記のとおりです。
ストレージ容量 | Recallのスナップショット領域 |
256GB | 25 GB (既定値)、10 GB |
512GB | 75 GB (既定値)、50 GB、25 GB |
1TB | 150 GB (既定値)、100 GB、75 GB、50 GB、25 GB |
Recalll機能のプライバシーとセキュリティ
もちろん、「私のパソコンの操作が全部記録されちゃうの!?」と不安に思う方もいるでしょう。しかし、スナップショットは暗号化されてローカルに保存され、クラウドにはアップされません。また、学習データにも利用されないため、安心です。特定のアプリやWebサイトを記録しないように設定することも可能で、スナップショットを取得していることはアイコン表示でユーザーに知らせてくれます。
最初、Recall機能は無効になっており、スナップショットは誰でも見られるものではありません。Windows Helloで強化されたセキュリティにより、ユーザー本人であることを認証しなければ、機能を有効化することも記録したスナップショットを見ることもできません。
この高いセキュリティ性を実現するために、Microsoft Plutonセキュリティプロセッサや強化されたWindows Helloが搭載されたPCが必要です。
Cocreator
簡単な絵を描いて、その絵から新たに絵を生成する機能です。ペイントに実装されます。インクストロークという簡単な絵とテキストプロンプトで新しい画像を生成します。
Windows Studio Effectsの強化
ビデオ会議などでリアルタイムに効果をかけるWindows Studio Effectsが強化されます。ポートレートライト機能は画像を自動的に調整し、暗い環境での照明を改善します。クリエイティブフィルター機能は、イラスト、アニメーション、水彩などの芸術的なフィルターをかけます。アイコンタクトテレプロンプターは、画面を読んでいる間にカメラ目線を維持し、音声フォーカスとポートレートぼかしの新しい改善により、常にピントを合わせます。
ライブキャプション
PCから発生する音をリアルタイムに翻訳し、画面にテロップ表示します。ビデオ通話アプリや動画再生など、すべてのWindowsアプリで使用できます。現在は英語を中心としていますが、将来的には40以上の言語に対応する予定です。
新型Surface
次回はCopilot+ PCとしての新型Surfaceについてお話します。