第2章 憧れの第一世代のパソコン
2.3 MZ-80K
シャープのパソコンMZ-80Kは半完成品です。マイコン博士MZ-40の流れで組み立てキットという扱いでした。後で完成品としたモデルにMZ-80K2、MZ-80Cが発売になっています。価格は198,000円です。(当時は消費税というものがなかったので198,000円出せば買えました。本体、モニタ、キーボード、データレコーダーと必要な機構がすべて入っている「オールインワン」マシンでした。
本体を開けるときは車のボンネットを開けるようにキーボードから上をモニタごと持ち上げる構造でした。また、キーボードが特徴的でした。真四角のキートップに格子状に並んだものでした。マイコン博士MZ-40のテンキーボードをそのままフルキーボードにしたという感じです。このキーボードは電子パーツでも売っているようなものでした。元々がキットであったことを感じさせられます。後継機の完成品モデルであるMZ-80K2も同様のキーボードでした。MZ-80C以降はJIS配列のタイプライターのようなキーボードとなりました。
外部記憶装置としてはカセットテープに記録するもので、カセットテープレコーダーは内蔵されています。専用設計であることもあり、カセットテープの読み取り精度は他の機種とは圧倒的に高いものでした。当時はカセットテープが伸びてしまうこともあり、データを正常に読み取ることができず、読み取りエラーが悩みの種でした。
そして、MZシリーズ最大の特徴が「クリーンコンピュータ設計」であることです。PC-8001など他の機種は電源を入れるとROMからBASIC(インタープリタ)が起動しますが、MZシリーズは電源を入れるとモニタープログラムが起動して、カセットテープからBASICを読み込むのです (*)。このモニタープログラムは「MONITOR SP-1002」というものです。IPL(Initial Program Loader:最初に動くプログラム)とも呼ばれていました。ここからBASICをロードします。BASICの型番は、SP-5030でした。開発元はマイクロソフトではなくシャープが開発したものです。クリーンコンピュータ構想として「BASICだけではなく色々な言語を動かすマシンになれる」という利点が挙げられていました。もちろんROMに書き込まれたBASIC言語にバグがあった場合の修正を装置の交換ではなくカセットテープの再提供と考えると効果的だったかもしれません。今でいうインターネットからアップデートプログラムをロードするようなものですね。とは言っても、使い始めるまでに10分程度待たなければいけないというのは欠点の一つではありました。
MZシリーズは、一体型のオールインワンモデルであること、クリーンコンピュータ構想を持っていること、BASICがマイクロソフトBASICでない国産ソフトメーカーによるものであることなど、PC-8001をはじめとした他の競合機とは異なる構成のパソコンといえます。それゆえ熱烈なファンが多いパソコンでした。
(*)パロディ版Ah!SKIでも「おら秋葉さ行くだ」という替え歌(吉幾三のおら東京さ行くだの替え歌)でも「テープからBASIC 10分ちょっとのローディング」と歌詞があったくらいです。