第5章 ホビー機能が強化された第三世代8ビットパソコン
5.3 富士通 FM-7
富士通の FMシリーズ(Fujitsu Micro Series) の一つである FM-8 は、ビジネス向けパソコンとして開発された機種でした。同シリーズでは初めて家庭向け市場に参入した機種が FM-7です 。
正式名称 Fujitsu Micro 7 。 FM-8 の廉価版であり、「7」 の由来について公式な説明はありませんが、「ラッキー7」 を意識して命名された可能性があります。後発機種である東芝の PASOPIA 7 も同じように「ラッキー7」 をイメージして名付けられたそうです。メーカー型番では FM-8 が MB25020 だったことから、 FM-7は MB25010 とされました。この当時 FM-8 および FM-11(後述) を「エイト」「イレブン」と呼ぶ人も多かった一方で、 FM-7を「セブン」と呼ぶ人も少なくありませんでした。また同時期に FM-8の上位機種として FM-11も発売されました。
FM-11は本体とキーボードが分離されたセパレート型で、ビジネス向け機能を強化したモデルでした 。 FM-8は家庭向けの FM-7とビジネス向けの FM-11に分岐して発展していきました。
富士通のFM-8はビジネスパソコンとしての色合いが非常に濃いパソコンでした。一方、ホビー用FM-7はホビー用途を前面に押し出し、ボディの色は白と薄い黄色(拡張カード格納の蓋に当たる部分)で明るい印象でした。価格も126,000円と挑戦的な価格でした。プロモーションもタモリさんを起用して「青少年は興奮する」というキャッチコピーで大々的に行われました。おそらく汎用計算機メーカーの富士通がコンシューマ市場に打って出たのはこれが初めてだったでしょう。また、タモリさんも当時「笑っていいとも!」が始まった頃で人気があり、趣味としてオーディオやアマチュア無線に造詣が深かったので一般の方にも我々マニアにも好印象でした。ちなみにFM-8のイメージキャラクターは伊藤麻衣子さんです。貴重な伊藤麻衣子さんのFM-8のポスターの写真はこちらにありました。
FM-8の下位モデルという位置づけでしたが、性能ははるかに向上していました。「価格は半分になり、性能は二倍になった」とも言われました。CPUはFM-8がモトローラの68A09で動作クロックが1MHzだったのに対し、68B09で動作クロック2MHzになりました。これは、内部動作の周波数です。6809は外部からの周波数を1/4にして内部動作させます。外部からは8MHz(FM-8は4.9MHz)の周波数が入力され、内部では2MHzで動作していました。これで性能がほぼ倍になり、「FMシリーズは遅い」という評判を払拭しました。 逆にFM-8より速すぎてしまうため、背面にはFM-8と同等の速度となるようなモード切替のDIP-SWが付いていました。
基本構成はFM-8と変わらず、メインCPUとサブCPUからなります。メインCPUはメインメモリ空間で処理を行い、サブCPUは画面処理を担当します。さらに、ヤマハのPSG(プログラマブルサウンドジェネレータ)を搭載し、ゲームの効果音や音楽演奏に威力を発揮しました。
BASICはF-BASIC V3.0が搭載されています。F-BASIC V1.0はFM-8、V2.0はFM-8のディスクBASICでした。ハードウェアとしてもFM-8と上位互換で、FM-8用のソフトはほとんど動かせました。
一方、FM-8にあったアナログポート(A/D変換)、バブルメモリ、シリアル通信(RS-232C)は削除されました。
FM-7は私が最初に買ったパソコンです。詳しくは後でお話しましょう。